サーバント・リーダーを育成の軸に

サーバント・リーダーを育成の軸に

青山学院大学
学長
仙波 憲一 氏


聞き手 編集局長 島田一

――青山学院創立140周年での駅伝初優勝や志願者数増加など青学のプレゼンスが向上している…。

仙波 ご承知の通り教育機関の社会環境が非常に厳しくなっており、それに対して適切に対応していかなければ生き残っていけない時代になった。そのための努力や様々な試みが実を結んでいるのだと感じている。箱根駅伝に関して言えば、たまたま青山学院創立140周年と初優勝が重なっただけだが、もちろん優秀な指導者や選手を集めるなど一定の支援はしたが、本学は決してスポーツだけではなく、勉学も両立させるよう指導している。また、いろいろな学生が在籍し、多様性があるのが大学であると考えている。特に地方の学生をなるべく多く集めるために、地方入試や首都圏以外の学生対象の奨学金制度などを2015年度から始めた。都心の学生ばかりではなく、地方や海外からの学生を多く呼び込み、様々な交流を図っていきたい。

――青学というと明るいカラーの印象がある…。

仙波 学長に就任してからいろいろなところで口にしている「青山らしさ」について「何かよくわからない」とご批判をいただくこともある。しかし、これは定義できるものではなく、言うなれば「校風」を大事にしていることだ。皆様のご理解を得るために私がよく引用しているものに、本学第二代院長の本多庸一先生の言葉がある。一つは、「自由闊達」。自由な発想で物事を考えながら新しい何かを見つけ出そうという精神だ。それともう一つ申し上げている言葉が「融通無碍」。同様に何事にも捕らわれずに真摯な気持ちで新しいものをどんどん試していこう、取り上げていこうという精神。決して伝統を無視するということではなく、新しい何かにチャレンジする精神は昔から脈々と本学に受け継がれている。その精神が明るいカラーを作っており、これが「青山らしさ」の根底にあるのではないだろうか。

――白川前日銀総裁の採用なども評価される…。

仙波 大学というのは研究教育の場であり、いい人材を育てて社会に貢献するというのが大事な目的だ。その前に大学はきちっと理論を教え、論理的に物事を捉え、考える訓練をさせる場であるとも考えている。そういう意味でも白川先生は論理的に物事を捉えられる方ですのでお願いした。単に社会で名前が通っているだけでなく、客観的に物事を捉え、論理的に分析でき、また人格的にも尊敬できる方なので、教育研究に資すると考えている。

――近年の学部再編の目的は…。

仙波 少子化や人口減少を背景に、基本的にどの大学でも「何とか生き残らなければならない」といった状況下にある。その中で、私立大学の理念に沿いつつ、研究教育の幅を広げるといった考えの下、本学に必要な分野は何だろうかと考え、欠けている分野を補う。そういった「選択と集中」を進めている。例えば第二部(夜間部)については夜間で勉強する学生が減ってきた社会のニーズの変化に柔軟に対応し、廃止を決定。その資源を昼間部にあて、2学部2学科を新設した。その1つである総合文化政策学部は、これまで「文化・芸術」をプロデュースする学問分野がなかったことや、商業施設や美術館が多く立ち並ぶここ「青山の文化」をうまく活かしながら研究教育していくことを目的として新設した。また、現代社会全体を捕らえる上では情報化の問題がある。社会情報学部ではデータベースについて理解すると同時に、社会、人間、情報といった文理融合型の学部となっている。ディシプリン(専門分野)型とインターディシプリナー(学際)型の学部とがあるが、これらはまさに後者だ。現代社会においては様々な課題が挙がっているが、それら課題に対して経済的側面だけではなく、政治的側面や人間の気持ちの問題もあるなど複雑だ。そういった問題に対応していくためにも様々な分野の融合系学部を大事にしていかなければならないと考えている。

――改革の成果は受験者数増加に表れている…。

仙波 少子化により生徒数が減って当たり前という時代に減らないでいられるのは、当学院に足らなかった分野を補い、時代に合わせていくといった考え方が必要だ。具体化させた例では、これまで当学院で国際分野というと英米文や国際政治経済学部といった欧米系だったが、今年4月より地球社会共生学部という新たな学部を開設した。この学部は「地球」ということで基本的には全方位だが、どちらかというとアジアに特化した新しい学部で、国際支援・国際交流を意識した勉強をさせる。「アジアの経済や社会はいったいどういったものなのか」を理論的にきちんと勉強させた上で、自分たちになにができるかということを考えさせる。現在もそうだが、今後10年、20年、30年先もアジアの知見を持った人材が必要となるとの考えだ。おかげ様でこの学部の受験倍率は平均して20倍、選択科目によっては60倍に達した。

――今後の方針は…。

仙波 やはり10年~20年先を見据えたときに、どういう分野を広げていかなければならないのかを常に考えている。学院創立140周年時に打ち出した「サーバント・リーダー(人に仕えると同時に人から共感される指導者)」となる人材育成を軸とし、総合大学院と創造的な研究拠点の構築が最終的な目標にある。本学は複数の学部を設けているが、私の一番の理想形としては、入学する学生がプログラム(授業)を通じてどの分野を勉強したいかを選択可能とするような大学にしたい。全学部共通教育システムである「青山スタンダード」の幅をさらに広げ、それぞれの分野を選べるような体制にしたい。大学というのは学生が成長する場所。学生の成長に応じて分野が選べ、学べる制度が絶対に必要となる。ただし、専門性が損なわれてはならないため、できる範囲で幅を広げていく方針だ。

――つまりさらに高レベルの教養人を育て、そのうえに専門性をつけていくと…。

仙波 すでに教養人を育てるというベースはあり、これからは教養の幅をさらに広げていくのが新たな挑戦だと考えている。非常に高い教養レベルを付けることが目標だ。しかし総合大学として単体で専門性に特化するというよりも複合的な選択を持って、研究(R型)と教育(E型)に特化していく方針だ。教育機能と研究機能を強化しつつ、サーバント・リーダーという人物像を育てるのに見合った教育プログラムを提供して、人と社会に奉仕できる人間を育てたい。これを実現するためにどうあるべきかを考えている。いかに社会に評価される人材を育成するか、また研究成果を出して社会から認められるようなるか、これからも努力し、150周年を目指したい。