修正国際基準で日本の意見発信

修正国際基準で日本の意見発信

企業会計基準委員会(ASBJ)
委員長
小野 行雄 氏


聞き手 編集局長 島田一

――6月末に修正国際基準(いわゆるJMIS)を公表した…。

小野 修正国際基準(JMIS)は、国際会計基準審議会(IASB)が12年12月末までに公表したIFRS(国際財務報告基準)の会計基準と解釈指針を対象に、それぞれ個別に日本で受け入れることが可能かどうかを判断してできたものだ。この結果、IFRSでのれんの償却が行われない点と当期純利益への組み替え調整(リサイクリング)が行われない点が我が国における会計基準に係る基本的な考え方と大きく異なると判断され、IFRSからこの2点を修正した会計基準を設定した。

――JMISを設定した意義は…。

小野 単に一つ一つのIFRSについて反論を主張するだけでなく、日本がどの項目を受け入れられるかを逐一議論し、それを適用可能な1セットの会計基準として国際的に示すことができたことに意義がある。我が国のポジションを示すこととなった。

――JMISが制度化されるまでの経緯は…。

小野 金融庁の企業会計審議会が13年6月、IFRSへの対応について「当面の方針」を公表した。ここで、ASBJがIFRSの個々の項目について受け入れ可能かどうかの判断、すなわちエンドースメント手続を行うことが示された。JMISはこの成果物となる。現在、金融庁が制度化を行うパブリック・コメントを公表中で、16年3月期から適用できることが予定されている。今回の修正国際基準JMISは、12年12月末までに発行されたIFRSが検討対象となっていたため、制度化された後は、13年以後にIASBから公表されたIFRSを速やかに反映するよう議論する予定である。

――ASBJの使命、取り組みは…。

小野 ASBJは、2001年の設立以来、日本基準の開発を行ってきており、日本基準を高品質な基準として保つことが、まず大きな使命となる。コンバージェンス作業を行ってきたことにより、日本基準は、国際的な会計基準と整合的なものとなっており、同時に、国際的に通用する高品質な会計基準となっている。また、最近では、対外的な意見発信が大きな取り組みとなっている。対外的な意見発信は、日本の意見をIFRSなどの国際的な会計基準開発に反映させることを目的に行っている。それに加え、JMISの開発が加わった。ASBJに対し、社会から要請されている期待はますます高くなってきていると感じており、期待に応えられるように対応したいと思っている。市場関係者の意見をよく聞いて取り組みたい。

――対外的な意見発信として具体的に行っていることは…。

小野 IASBの諮問機関として会計基準アドバイザリー・フォーラム(ASAF)が13年に設立され、3カ月に1回のペースで会議が開催されている。ASAFは、米国財務会計基準審議会(FASB)や欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)など各国の主要な会計基準設定を行う団体など12人のメンバーによって構成されている。ASBJは設立当初よりメンバーとして参加しており、今年行われたメンバーの改選後も引き続き参加することとなった。IASBが行うIFRSの基準開発に対し、我が国の意見をまとめたペーパーを作り、ASAF会議で積極的に意見発信を行うようにしている。

――海外の会計基準団体との交流は…。

小野 FASBとは10年以上、年2回、定期的に協議を行っている。FASBは歴史もあり、人材も豊富で、会計基準設定の高度なノウハウを持っており、意見交換を行うことはASBJにとって非常に有益である。また、EFRAGとも年1回の定期協議を行っている。EFRAGは、欧州がIFRSの受け入れ判断を行う際に欧州議会に対してアドバイスを行う機関である。欧州の上場企業は、IFRSの使用を義務付けられており、世界最大のIFRSのユーザーであるため、EFRAGの活動は、我が国がIFRSの導入を促進する上で、参考になることが多い。

――日本で現行のIFRSを適用する企業の状況は…。

小野 IFRSを適用する企業は、導入された当初こそ少なかったが、ここ数年で増えてきており、現時点で90社程度となっている。金融庁は、IFRSを適用する際のメリット等をまとめたレポートを4月に公表しており、そこでは、特にグローバルに企業活動を展開している企業にとって、経営管理を高度化することができる点などがあげられている。

――日本基準では、税効果会計についての実務指針の見直しも行われた…。

小野 税効果会計についての実務指針については、01年にASBJが設立されるより前に、日本公認会計士協会(JICPA)が作成しており、現在もその実務指針が使われている。この実務指針の作成を、JICPAからASBJに移管すべきであるとの意見が関係者から上がり、現在、移管の作業を行っている。なかでも繰延税金資産の回収可能性については、現在の実務指針では、企業の実態が財務諸表に反映されないという意見が聞かれ、繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針の公開草案を5月に公表した。

――このほか、日本基準の開発で大きなテーマは…。

小野 収益認識基準の開発が、大きなテーマの1つだ。IASBは14年5月にIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」と題する収益認識基準を公表した。同時に、米国のFASBも同じ内容の新基準を公表した。これは売上高を決める基準となるが、日本では現在、IFRS第15号のような包括的な収益認識基準はなく、売上高は実現主義により計上されている。IASBとFASBが損益計算書のトップラインを決める会計基準において足並みを揃えた中、日本基準もそれと整合的なものにすべきとの意見が産業界から聞かれ、今回取り組むこととなった。収益認識専門委員会を5月から再開し、審議を開始している。現段階では、日本基準にIFRS第15号の考え方を導入した場合に考えられる論点を把握することがまず重要と考えており、専門委員会で論点をよく整理した上で、広く意見募集を行うための文書を年内に公表したいと考えている。