証券との連携をさらに強化

証券との連携をさらに強化

大和ネクスト銀行
代表取締役社長
中村 比呂志 氏


聞き手 編集局長 島田一


――今年で開業5周年を迎えたが…。


中村 預金口座数は、昨年2月に100万口座を突破し、今年3月末で約110万口座となった。当行の特徴は証券と銀行が連携するビジネスモデルであり、大和証券の支店で対面取引が可能なことだ。ネットバンクでありながら、銀行代理業者である大和証券の支店で預金を集めることができる。開業当初は預金残高をどう増やすかが最重要課題であったため、金利キャンペーンを積極的に行った。預金残高も3月末で約3.1兆円と、順調に伸びている。大和証券の営業員にとっては、なぜ預金を集める必要があるのか、当初は腑に落ちないこともあったかもしれない。だが、口座開設後は半数以上の顧客が大和証券で有価証券に投資してくれている。また、大和証券の新人営業員にとっても、投信・保険などと比べより仕組みがわかりやすい預金を、新規顧客開拓ツールの1つとして活用できるという利点もある。

――今後も預金の拡大に注力していくのか…。


中村 いわゆるマイナス金利の今の環境下では、預金残高を増やすこと以上に、いかに運用するかが課題となっている。運用難だからといって預金残高を減らすことは考えていないが、現在の3兆円の規模をある程度維持しながら、いたずらに増加させないようコントロールする方針だ。円金利もかなり低下し、運用している債券等の償還も徐々に迎えるなか、外貨預金残高はこれまで通り拡大させるよう重点的に取り組んでいく。外貨預金残高は、足元で2000億円超となっている。もともと大和証券を通じて外国債券に投資する顧客がいることから、外貨を一から集めているわけではないものの、地銀のトップクラスと並ぶ水準ではないかと思う。外貨預金の拡大に向け、昨年7月に他行に先駆け米ドル定期預金の金利を高めに設定したことも寄与している。

――運用難はかなり深刻か…。


中村 マイナス金利の影響から、運用難に直面しているのは他行と同様だ。預金金利をマイナスにすることは難しいため、円預金の受け入れが増加すれば利ざやにも当然マイナスの影響がある。証券会社なら運用難の環境下で投資を促進させることもできるが、銀行には直接的にマイナス金利が響いてくる。ただ、MMFも受付を停止している今の環境下では、より預金が集まりやすくなることも考えられる。一方コスト面では、当行では銀行としての支店がなくサービスも限定しているため、本体の従業員数も100名弱と他のネットバンクと比べても少ない人数で運営でき、コストを抑えられる仕組みとなっている。貸出を例にとれば、その大半はローン債権の証券化商品が対象であり、住宅ローンなどを取り扱わないことでコストを抑制している。

――運用難への対応は…。


中村 最も手がけやすいのは、外債等による外貨建て資産での運用だが、どの銀行もかなりこの運用を行っているため外貨調達プレミアムが一時急上昇した。ユーロ建てのものもさほど収益が見込めない。一方、銀行はリスク管理上、金利リスクの増加に制約があるため、超長期を積極的に購入することもできない。短期の国債を買うか、金利スワップを利用してヘッジするなどして金利リスクをコントロールしなくてはならない。当行でも株式投信での運用も少し行っているが、これに対しても制約がかかることなどから、運用面はかなり厳しいというのが現状だ。

――BIS規制の影響は…。


中村 規制の影響としては、当行単体に課せられる規制に加えて大和証券グループ本社(8601)がD-SIBs(国内のシステム上重要な銀行)に指定されているため報告義務が課される。だが、流動性規制に関しては資産の大半が有価証券等の流動性の高い資産となっているため十分な流動性がある。自己資本比率は単体で33.93%(3月末、国内基準)と十分にあり、欧米投資銀行の様に様々なアセットを削減しなければならないわけでもない。ただ、欧米銀が規制で動きづらい分、流動性が低下し、環境が不安定となっている点では投資環境に影響がないとは言えない。

――運用以外の課題は…。


中村 これまでと同様、大和証券との連携を強めることだ。この点を重視しているため、今まで扱ってこなかった貸出など、新サービスへの進出はあまり考えていない。また、当行の口座は個人の決済口座ではないため、FinTechのサービスを広げる流れとも少し距離があると考えている。とはいえ、規模が大きすぎない分、動きやすいことが当行の強みとなっているため、すぐに活用しなくともFinTechの情報は集めている。

――大和証券との具体的な連携は…。


中村 大和証券との連携の一環としては、例えば、ファンドラップと円定期預金を同時に申し込めば円定期預金の金利を上乗せするサービスがある。ファンドラップのパフォーマンスも良かったため、この預金を用いてファンドラップをまた買うという使い方もできる。当行は証券グループの銀行として、「貯蓄から投資へ」のゲートウェイ機能を担うことを掲げている。現在は預金増加をコントロールしているものの、当行の預金を起点として大和証券での投資にもつなげられるよう、これからも大きな役割を果たして行きたい。

――証券以外での提携は…。


中村 マネーパートナーズと提携し、同社が発行する海外プリペイドカードで当行の外貨普通預金にある外貨を現地で引き出しできるサービスを提供している。マスターカード加盟店でも使えるため、世界210カ国以上の国・地域で利用できる。これは、外貨預金を「外貨のまま使う」ということを可能にするサービスであり、外貨預金を始める際の敷居を低くする効果を狙っている。

――将来像は…。


中村 銀行は収益を上げられるビジネスだ。金利水準にもよるが、短期金利と長期金利に差があればそれで収益を出すことができる。当行のような支店コストなどを要しない銀行はなおさらだ。このため、金利が上昇する局面になれば、再び預金規模を拡大し、運用収益の極大化を目指していきたい。