マイナス金利下で存在感

マイナス金利下で存在感

東京短資
代表取締役社長
柳田 友一郎 氏


聞き手 編集局長 島田一

――4月に持株会社制を廃止し、1つの組織となった…。


柳田 東京短資を存続会社として、東短ホールディングス、ホールディングス傘下の東短インフォメーションテクノロジーの2社を統合した本来の狙いは、いずれ到来すると思われた金利上昇局面に対応するよう経営資源の集約を図り、同業他社と同じ土俵で勝負できる自己資本にすることだった。実際はマイナス金利となり、更に経営環境が厳しくなったものの、グループ再編で自己資本の厚みが増したことで、この環境にあっても様々なことにチャレンジできる基盤を得ることが出来、統合はプラスの効果となったと考えている。

――コスト削減は進んだのか…。


柳田 今回の統合ではシステムの効率化はあったものの、大幅なコストの削減は実施しなかった。本来の合併なら、重複や間接部門が集約されコスト削減につながるのだろうが、統合前の3社はそもそも業務に重複がほとんどなかった。東短ホールディングスは持株会社としての機能を果たし、東短インフォメーションテクノロジーはグループ内のITインフラを主に手がけていたため、グループ内での競合もなかった。各会社のマネジメントも統合によって大きな変化はない。一部の総務・経理は重複していたものの、元々人数も少なく、元の東京短資がグループ全体を見るという側面も既にあったので、今回の合併ではリストラするほどの余剰もなかった。全体の社員数もピークに比べ減っており、バブル当時から比べ相当筋肉質な会社になってきている。

――統合の弊害はないのか…。


柳田 ホールディングス制にもメリットがあり、今回の統合に至るまでにかなりの議論を重ねた。ただ、ゼロ金利政策の長期化が見込まれていた持株会社の設立時とは異なり、マイナス金利の環境下とは言え、現在は市場のボラティリティが大きくなっており、統合により自己資本が厚くなった意義は大きい。また、3社は統合以前から同じ建物内で業務を行っていたため、通常の統合にありがちな会社間の軋轢も発生していない。このほか、今回の統合により、東短ホールディングスの持ち株会社としての業績が東京短資に一本化されたことで、株主にとっては同業他社とより比較しやすくなったという面もある。

――マイナス金利への対応は…。


柳田 マイナス金利になりコール残高は更に低下し厳しい市場環境が続くが、以前のコール取引がゼロ%近辺に張り付いていた頃に比べれば、マイナス金利圏での取引になったことでボラティリティが上昇しているため、価格調整機能を担う仲介業としては十分存在感を示せるのではと考えている。

――マイナス金利導入により、市場に動きが出てきている…。


柳田 マイナス金利でコール市場で資金の過不足を必死に最終調節する動きが復活している。特に、ゼロ金利しか知らない世代に、金融市場に向かい合う感覚、姿勢に変化が出てきた。また、かつての市場では資金の出し手と取り手がある程度固定されていたが、マイナス金利導入以降は出し手と取り手が日によって替わっている。これには日銀当座預金でマイナス金利が適用される残高が預金の集まり具合で日々変わることなどが背景にある。いかに顧客のニーズをつかんで情報を提供し、ベストプライスを取れるかという点でここはまさに仲介業者の腕の見せ所だ。

――短期金融市場以外の分野への注力は…。


柳田 レポやデリバティブまた海外展開など、他の短資会社に比していち早く取り組んできたという自負はある。事業を分散化し、リスクを増やさずに収益をあげるように努力してきた。グループでの力を結集して取り組むことは今後も継続する。注力する分野としては、ホールセール、かつ本業へのシナジー効果があるものに注力し、それが見込めるような投資・M&Aについては今後も取り組んでいく。

――対企業間での分野で特に興味があるものは…。


柳田 現在脚光を浴びているフィンテックには注目している。とは言え、金融とシステムの融合という意味では、90年代の外国為替取引に始まり、2009年には債券レポの電子仲介システムに取り組むなど過去から投資を続けている。現在では、システムの変化がかなり速まっているため、技術革新のスピードはこの業界にどのように影響してもおかしくないと思っている。よって、あらゆる情報に耳を傾け、必要な投資は確実に行うようにしていきたい。

――この環境下での経営努力は…。


柳田 ゼロ金利時代から経営のスリム化をかなり進めてきたため、人件費をこれ以上削減するのは難しいのが現状だ。システムについても、規制・制度対応等、より費用が掛かる。経費のスリム化は既に限界のところまで来ている。このため、経費削減よりも営業努力により重点を置く。マイナス金利下では、今後どう動くか不透明だが、スピード感を持って意思決定ができる組織が求められる。そのためには、機動的に動ける組織をいかに構築するかが最大のポイントだと考えている。また、市場が大きく変わる時には、大きなチャンスがあると認識しており、そこで如何に積極的にチャレンジするかを考えている。マイナス金利導入により市場に新たなニーズが生まれる可能性もあり、それが新たなビジネスへとつながることが出来れば積極的に投資していきたいと考えている。