外国人労働者で成長率押し上げ

外国人労働者で成長率押し上げ

自由民主党
参議院議員
木村 義雄 氏


聞き手 編集局長 島田一

――委員長を務められた自民党の「労働力確保に関する特命委員会」で、外国人労働者の受け入れを拡大する方針が取りまとめられた…。


木村 政府はこれまで高度な技術や能力を持つ外国人労働者は受入枠等の制約を設けず積極的に受け入れてきたが、それ以外の労働者についてはいわゆる「単純労働者」と位置づけ、受け入れに対しては消極的だった。ただ、日本では現在、医療・介護や農業、建設など幅広い業種で人手不足に悩んでいる。例えば直近の求人求職状況では、介護分野には約24万人の求人があるにも関わらず、求職者は約8万人にとどまっており、差し引き約16万人のギャップが生じている状況だ。これに飲食業や農業を加えると、求人数と求職者数のギャップは40~50万人規模にも膨らんでいる。訪日外客数を年間4000万人まで増やしていくのであれば、飲食店や旅館で働く人は今後さらに必要になる。このため、特命委員会が取りまとめた基本的考え方では、外国人労働者について適正な管理を行う新たな仕組みを前提に、移民政策と誤解され得ないよう配慮しつつ、積極的に受け入れを進めていくべきであると提言している。人口が減少するなかでも日本の活力を維持するため、現在の外国人労働者数約90万人を倍増させることを目指していく。

――外国人労働者の受け入れを進めていくうえでのポイントは…。


木村 しっかりとした能力や信用力のある団体に外国人労働者の受け入れ先となってもらうことが重要だ。従来の外国人技能実習制度では研修・技能実習という形式で外国人労働者を受け入れてきたが、労働者と受け入れ先の間にブローカーが介在したことにより、間接コストの増加に加え研修生の失踪など様々な問題が発生している。そこで、新たな制度では外国人を正面から「労働者」として受け入れるとともに、受け入れ先の団体についても一定の要件を設けることとしている。当局によるチェックも隅々まで目が行き届くわけではないため、受け入れ団体には外国人労働者の管理にしっかりと責任を持ってもらう仕組みを作る予定だ。さらに万が一受け入れ団体のセキュリティが弱ければ、その団体から外国人労働者を雇う企業にも責任を取ってもらうなど、相互に関連するような仕組みとすることを想定している。自民党と法務省・厚生労働省等の関係当局の間ではこの仕組みについての検討をまさに進めており、できるだけ早く具体案を示したいと考えている。また、外国人に一定期間内で技能を身に付けて帰ってもらうということも引き続き重要であり、新制度により外国人技能実習制度を直ちに廃止するということではない。

――外国人技能実習制度では実質的に低賃金労働が可能だ…。


木村 新たな制度の下で外国人労働者を受け入れるためには、日本人と同等程度かそれ以上の報酬を支払うことや、雇用保険・年金を含めた社会保障制度への加入など、日本人の労働者と全く同じ土俵で雇用することとする。外国人労働者と聞くと「安い賃金で雇うことができる」などと期待する人もいるかもしれない。ただ、香港や台湾、韓国なども東南アジア市場での人材確保に力を入れるほか、ドイツも東南アジアで求人を出しているという。また、今後は一人っ子政策で人口が逆ピラミッドになっている中国が介護人材の確保に乗り出してくることは必定であり、労働力の確保を巡る国際的な競争は激化する一方だ。こうしたなか、もはや安い賃金で外国人労働者に集まってもらうことを想定した仕組み作りは意味がない。

――新制度により、外国からの移民が増える心配は…。


木村 移民と外国人労働者を同一視する人もいるが、これは間違っている。来日した時点で無制限の在留許可を与えられた外国人のことを「移民」と呼んでいるが、外国人労働者については当面5年間の在留期限を設け、それ以降も在留する場合には5年ごとに更新の手続きをしてもらうため、移民には該当しない。更新の手続きをどのようにするかは、移民ということにならぬよう今後詳細を詰めていく。ただ、日本で真面目に働いている外国人労働者であれば、人口も増え、かつ社会保険料も払ってくれるため、基本的にはウエルカムだ。5年ごとの更新手続きを行ってさえくれれば、長い期間在留してもらっても問題はないと考えている。また、一昔前であれば母国への帰国にも高額の航空運賃を払わなければいけなかったが、現在ではLCCの発達等により移動のコストも大幅に下がっている。このため、また、季節性のある農業分野等を念頭に、5年間の在留期間内であれば外国人労働者の一時帰国と再入国も認める方針だ。

――仏教以外の多様な宗教を持つ外国人が多く入ってくることで、混乱は生じないか…。


木村 日本に外国人労働者がたくさんやって来るというと、まるで過激な宗教持つ人が来るかのように思ってしまう人もいるようだが、これは明らかに間違っている。本来、宗教には人に対する優しさなどプラスの側面があり、「宗教心に富んでいる人」と「宗教原理主義者」は全くの別物として考えなければならない。すでに日本の介護施設では多くのフィリピン人やインドネシア人が働いているが、入居者に対して丁寧かつ優しい態度で接するため、ぜひ外国人を自分の担当にしてほしいと引っ張りだこになっているケースもあるという。

――どの国・地域を中心に外国人労働者の受け入れを進めていくか…。


木村 基本的にはフィリピンやインドネシアをはじめ、東南アジア地域が中心になっていくと想定している、また、特命委員会が取りまとめた基本的な考え方では、外国人労働者の受け入れに当たっては「送出し国との間の政府間の話し合いが必要」としているが、これはシリアなどの紛争多発地域を念頭に「どこの国でもいいから外国人労働者が入ってきて欲しいわけではない」ということを極めてソフトに表現している。

――新制度のスタートはいつごろになるか…。


木村 知恵を合わせていい仕組みを考えたうえで、出来るだけ早く外国人労働者の受け入れ拡大に本格的に着手していきたい。もちろん、支障が生じれば制度の見直しは行っていく。いずれにせよ、外国人労働者の受け入れ拡大により国内の雇用者数が約100万人増えることのインパクトは相当に大きい。経済成長率がおよそ0・5%押し上げられる程度には寄与するのではないかと期待をしている。