『第2創業期』を見据えた社会保障を

『第2創業期』を見据えた社会保障を

衆議院議員
自民党
村井 英樹 氏


聞き手 編集局長 島田一

――解雇規制の緩和を提案された…。


村井 私が事務局長を務める「2020年以降の経済財政構想小委員会」が取りまとめた、「人生100年時代の社会保障へ」と題する提案の中に盛り込んだ要素の一つで、持続可能な社会保障制度を実現するために必要だと考えている。グローバル化や技術革新の影響を受け、企業の寿命は短くなりつつあり、終身雇用を前提とした社会保障を維持するのはもはや非現実的だ。そこで我々は先手を打って、より現実に合わせた雇用制度を整えるべきだと提案している。理念としては、「雇用を守る」のではなく、「人を守る」のが我々の考えだ。ライフスタイルの多様化も踏まえ、個人が転職を繰り返すのを前提として、退職しても生活を守れるセーフティネットが必要と主張している。

――具体的にはどうするのか…。


村井 企業には、自社よりも外部での活躍が見込める人材が飛び出しやすくなるよう、退職者の再訓練や再就職の費用の負担を求める。これは短期的には労働者にも痛みを伴う制度改革だが、より相応しい職場に移動した方が、長期的には本人にも企業にも利益になるはずだ。政府としても、退職者が成長産業に円滑に移動できるように、学び直しや再就職に対する支援を抜本的に強化する。また、終身雇用を前提に設計されている現在の社会保障制度も見直しを行う。具体的には、いかなる雇用形態であっても就職者は全員社会保険に加入できるようにする「勤労者皆社会保険制度」を導入する。現状では、一定の所得や勤務時間に満たない労働者は企業の厚生年金や健康保険に加入できないが、この状況を改め、労働者は誰もが充実した社会保障を受けられるようにしたい。これにより、どのようなライフスタイルであっても、安心して生活できる社会の実現を目指す。

――提案の意義をどうみるか…。


村井 我々の提案は将来的な経済成長とセーフティネット充実を同時に実現する上で必要だと考えている。また、解雇規制など労働法制の見直しは非常にセンシティブであるだけに、提案に盛りこめたのには大きな意義があると自負している。小委員会の中でも色々な意見はあるが、大きな方向性は委員長代行の小泉進次郎氏を含めて全員で合意できている。現在提案は茂木政調会長預かりとなっているが、実現しやすいものから具体的な制度設計の議論が行われていく予定だ。

――実現しやすいものは…。


村井 例えば年金受給開始年齢の柔軟化が挙げられる。現行制度では、60歳からの受給で年金額は3割減、70歳からの受給で4割増となっているが、例えば75歳で受給しても増額率は4割のままだ。つまり75歳まで働き、保険料を納めることへの逆インセンティブが発生してしまっている。これからは長寿化やIT化でより高齢でも働けるようになると見込まれるが、そうした方々が働けば働くほど得になる「人生100年型年金」を整備する必要がある。具体的には、70歳を超えて働けば、その期間に応じて、支給額が4割を超えて増加させることが考えられる。年金改革は、どのような形であれ野党の抵抗が大きくなりやすいが、今後の日本のために必要なことをしっかりと議論していきたいと考えている。

――「健康ゴールド免許」を提唱されている…。


村井 これは、健康を維持するインセンティブを付与するためのものだ。現在のところ、医療費の多くは生活習慣病などのように、きちんと自己管理ができれば予防・低減できる病気への治療に費やされている。つまり、国民一人一人が健康管理に力を入れれば医療費を大きく抑えることが可能なのだが、現在のところ、努力している人も、そうでない人も医療費負担は同じく3割となっており、自助を促すインセンティブが十分とは言えない状況だ。そこで定期的に健康診断を受診し、その結果に基づき保健指導を受けるなど、健康管理にしっかりと取り組んだ方を、運転免許の「ゴールド免許」と同じような優良者枠に認定し、該当者は自己負担を低く設定する制度を提案している。

――現在を日本の「第2創業期」と位置付けている…。


村井 戦後の経済発展である「第1創業期」は、人口ボーナスなどを受けた高い経済成長を背景に、国民皆保険や年金の導入が国民生活を豊かにしてきた。しかし2020年以降は、少子高齢化による人口オーナスが発生するうえ、グローバル化やIoTの発達などで、従来のようなライフスタイルを維持することは不可能だ。いわばこれから日本は「第2創業期」に突入するのであり、それに備えて新しい日本を描く必要がある。少子高齢化対策は最重要課題ではあるが、基本的には人口減少は不可避であることを認めたうえで、人口減少をチャンスととらえ、日本の強みに変えていくための方策を考えなければならないだろう。