穏健なリベラル保守の新勢力を

穏健なリベラル保守の新勢力を

衆議院議員
岸本 周平 氏


聞き手 編集局長 島田一


――都議選では本来、民進党が与党批判の受け皿になるべきだった…。


岸本 2009年の東京都議会議員選挙では民主党の議席数は54議席あったが、2013年の前回選挙では15議席に減少した。さらに、今回は民進党の公認候補が都民ファーストの会に移ったことにより候補者数そのものが目減りし、選挙前の7議席がさらに5議席まで減少する結果となった。都議会選挙の結果は次の衆院選を占うと言われている。二大政党制のなかで民進党が与党批判の受け皿となるためには、このままでは党が消滅してしまうという危機感を共有して改革を進めていく必要がある。ただ、現在の執行部からはそうした雰囲気をあまり感じない。

――民進党の改革に向けた取り組み状況は…。


岸本 当選回数3回以下の若手議員では党改革の必要性を主張しており、4月には野田幹事長に対して提言書を手渡した。今回の都議選が終わった後も私が代表して野田幹事長に面会し、選挙結果の総括と両院議員懇談会の開催、4月の提言内容の実行を申し入れたところだ。具体的には、都議選の大惨敗は所属議員一人一人の力が足りなかった結果であり、責任の押し付け合いは回避して蓮舫代表を支えていくべきだということを伝えた。その代わり、蓮舫代表以外の執行部を刷新し、若手議員を登用するよう求めている。旧民主党内閣時代の閣僚経験者は立派で個人的に大好きな人ばかりだが、政権が崩壊した責任は彼らにあることもまた事実だ。国民の間では失敗のイメージが根強く残っており、党の名前が変わり、代表が代わったにも関わらず、結局その周りを固めているのは当時の閣僚経験者ばかりで代わり映えがしない。これではどんなことを言おうと国民からは信用されない。そこで、民主党内閣当時は政務官にもなっていないような当選3回以下のフレッシュな若手に一度チャンスを与えて頂き、当時の閣僚経験者は「1回休み」で若手を後ろから支えてほしいとお願いをしている。

――自民党に対し、今後の民進党はどのような政策を打ち出すのか…。


岸本 もともと民主党は自民党田中派の流れを継ぐ保守系の勢力に、旧社会党や市民運動家がくっついて出来た勢力であり、外交安全保障についてはハト派ながらも現実主義だ。例えば、民主党政権では武器輸出3原則を解禁し、自衛隊の戦力を北海道から南西諸島に振り替えた。確かに鳩山政権では日米関係でつまずいたが、その後の野田首相時代は友好的な関係を築くことに成功している。また、社会保障については消費税で財源を賄い、きちんと再配分をしていく。自民党の社会保障政策では、まるで「生活保護をもらうのは恥ずかしいことだ」と言わんばかりの自己責任的な発想が強いが、我々は憲法25条に書いてある健康で文化的な生活は国民の権利だという全く違う哲学を持っているので、この差を明確にしていく。

――財政再建に対する考え方は…。


岸本 昨年度に一般会計税収が目減りしたことが示すように、経済成長による税収増で財政再建を達成するという政策が成り立たないことはもはや明らかだ。確かにアベノミクスの実施1年目は円安と株高が進んだが、安倍政権下でこれまで税収が増えてきた最大の要因は2014年4月の消費税率3%引き上げであり、景気頼みでは財政再建は出来ない。

――具体的にはどのよう財政再建を進めていくべきか…。


岸本 手段としては消費税率の引き上げが中心となる。確かに消費税率を引き上げたその年は景気が悪くなるが、消費増税から2年連続で景気が悪化することは通常考えにくい、さらに、税率引き上げ前の1年間は駆け込み需要で景気は良くなるので、これと反動減を相殺すると基本的には景気への悪影響はない。では、なぜ安倍政権で消費増税により景気が悪化したかというと、それは円安で物価が上昇したにも関わらず賃上げは進まず、実質賃金が低下してしまったからだ。さらに言えば、私たちは日銀が年間6兆円も株式のETFを買ってまで株価を引き上げる必要はないし、年間80兆円も国債を買ってまで物価を2%にする必要もないと考えている。日本経済は体力的に見て高い成長は期待できず、潜在成長率のゼロ%~1%の範囲内でうまく舵取りをしていかねばならない。

――1000兆円もの国の借金を考えると、消費税率は相当引き上げる必要があるが…。


岸本 消費税率の引き上げは徐々に進めていくほかない。幸いにして、日本の個人金融資産は「金利が低いから貯金する」という日本人ならではのマインドを背景に国債の残高増加分と同程度のペースで増えており、今後5年程度は国家財政が急に破たんする可能性は低い。安倍政権が進める10%への消費税率引き上げでは、増税分のほとんどは借金の返済に充てられる予定で社会保障に回される分はわずかとなっており、増税に対する国民の忌避度は高い。そこで、我々は消費税率を引き上げた分は全て社会保障の財源として国民に返るようにし、まずは増税に対する忌避度を下げていく。その後は社会保障に充てる割合を7割、5割、と少しずつ減らしながら、福祉の大盤振る舞いもできないため歳出も徐々にカットしていく方針だ。財政再建に魔法の杖はなく、消費増税を延期し続けてもそこに答えは無い。きちんと税金を上げる癖はつけなければいけない。

――都議選での都民ファーストの会の圧勝の要因は何か…。


岸本 今回の圧勝は、フランスの大統領選挙でのマクロン旋風に似ている。フランスはこれまで2大政党として政権交代を繰り返してきた左派の社会党と右派の共和党がともに没落したため、国民の期待は中道のマクロン氏に集まり、結果的に大統領の座と議会勢力の過半数を与えた。今回の都議選では「自民党は駄目だけど民進党はもっと駄目」という状況のなか、公明党や連合の支援も後押しに中道の都民ファーストの会が急浮上した。これは、かつて同じく公明党と連合を支持母体として躍進した新進党のモデルと極めて似ている。公明党はもともと世界平和や弱者の保護を主張する政党であり、労働組合とも親和性がある。今後、大企業中心の自民党に対抗していくことを考えたとき、この「新進党モデル」は意外と有効になるのではないか。

――都民ファーストの会が国政に進出した場合の連携については…。


岸本 お互いに政策が合致するならば、選挙協力をしてもよいと思う。ただ、まずは自民党批判の受け皿となり得る穏健なリベラル保守勢力を我々自身が作り上げることを考えている。民進党のカラーを塗り替えて中道の位置に来るようにすることが一番だが、党内の説得を含めてそれだけの時間が残されているかどうかが最大の問題だ。民進党には一宿一飯の恩義があり、私自身としても保守勢力による二大政党制を日本で確立するために政治家を志している以上、あちこち動き回るような節操のない真似をしたくはない。とはいえ、民進党を再び二大政党の一角として抱え起こすことができないのであれば、いわゆる反自民・非共産の勢力で1つの中道政党を作り、自民党と連立を組んだうえで自民党のハト派を割りにいくという戦略もあり得る。私も民進党の改革に向けて努力するが、それでも民進党が立ち直れなかった場合、若手議員の仲間で古い民進党に別れを告げて天下を取りに行こうと考えている。