偏向新聞対策が沖縄の課題

偏向新聞対策が沖縄の課題

八重山日報
編集長
仲新城 誠 氏


聞き手 編集局長 島田一

――普天間基地の辺野古移設をどうみるか…。


仲新城 辺野古への移設は、基地面積が大幅に縮小されるうえ、滑走路を沖合に移動することで危険も除去される。このため明確な負担軽減策といえるが、この趣旨は沖縄県民に全く理解されていないのが現状だ。この背景には、沖縄の主要メディアがこぞって「反基地イデオロギー」に染まっていることがある。そうしたメディアは、一連の動きは辺野古への「基地移設」ではなく、辺野古での「新基地建設」だと喧伝している。そして「新基地建設」は戦争の前準備であると主張し、負担軽減どころか戦争に巻き込まれる危険性が増すとして県民の不安感をあおっている。

――本土とは見方がまるで違う…。


仲新城 本土では賛成派のメディアが存在し、反対派も辺野古移転は負担軽減策と認めたうえで、「それでも沖縄県民が嫌がっているからやめるべきでは」いった論調の報道を行っているのとは大きく異なっている。これにより、沖縄と本土との間で基地問題に関する市民の認識に大きくギャップが発生してしまっているのが実態だ。はっきり言って、このギャップを対話によって埋めるのは不可能だ。安倍政権は強引にでも普天間移設を開始し、問題を片付けようとしているが、これはやむを得ない方向性だと思う。過去の政権は、対話や地元の理解を重視しようとしてきたが、そのために移設が進まず、かえって問題をここまでこじらせてしまった。

――基地賛成派はいないのか…。


仲新城 実は、沖縄の中でも、沖縄本島と石垣島などの離島とでは基地への見方は大きく異なる。本島ではメディアの影響もあって基地に反対する意見が主流だが、直接中国の海洋進出の脅威に晒されている離島の住民は、米軍や自衛隊による抑止力は必要との考え方が強い。人口は圧倒的に本島が多いため、国政・県政レベルでは基地反対を掲げて翁長知事が率いる「オール沖縄」が常に優勢だが、離島の自治体の選挙では自民党候補者が勝利する流れが続いている。例えば石垣市では自民党の推薦を受けた中山市長が2回当選してきた。同氏が再選すれば、石垣島への自衛隊配備が最終決定するだろう。

――沖縄メディアは抑止力をどう考えているのか…。


仲新城 彼らの理屈は「現状、米軍基地が存在しているにも関わらず中国が領海侵犯を繰り返している以上、米軍の存在は抑止力となっていない。従って米軍はいてもいなくても同じだ」というものだ。しかし、私に言わせれば、もし米軍がいなければとっくに中国は尖閣諸島を占領していたはずだ。抵抗勢力がいない南シナ海では中国が着々と島々や岩礁を占領し続けているのをみれば、このことは明らかだろう。

――なぜ沖縄メディアは中国を利するような報道をするのか…。


仲新城 かつての共産主義運動や学生運動時代の考えを堅持している世代が編集方針を定めているからだろう。そうした方針に沿って人材を採用し、社内教育も行っているため、おそらく自発的に彼らが報道方針を転換することはない。彼らの究極的な目的は米軍基地の完全撤去であり、どのような県内移転案であっても理屈をつけて阻止しようとし続けるだろう。彼らは狡猾な面もあり、例えば辺野古移設については、政府が負担軽減策として推し進めていることは報道するが、必ずその隣に解説で「政府の主張は詭弁」などと打ち消す記事を掲載する。こうした報道によって、県民は政権が嘘ばかり並べているとの印象を抱いてしまっている。

――新たなメディアが必要だ…。


仲新城 実際、沖縄のメディア問題は辺野古問題や沖縄振興問題に並ぶ沖縄の主要課題といっていいだろう。本土の全国紙も、それぞれの主張に沿った報道は行っているが、沖縄には本土と違って主要2紙以外に有力な新聞がなく、県民に選択肢がないのが問題だ。私が勤める八重山日報は新たな選択肢になろうとしており、現在は沖縄本島でも約2000部を発行しているが、正直に言えば頭打ちになりつつある。力及ばない部分もあるが、沖縄の閉鎖的な言論空間を打破するために頑張っていきたいと思っている。他紙との協力も行っており、現在は産経新聞と記事の相互提供を行っている。

――沖縄経済にとっての基地の重要性は…。


仲新城 昔はともかく、現在は基地収入以外の産業が育ちつつある。例えば最近では観光業が非常に好調となっているほか、沖縄振興開発金融公庫の新規創業向け融資はうなぎのぼりとなっており、経済の状況は過去最高と言われている。人手不足感も非常に強まっており、観光や建築関連の企業は常に求人を行っている状態だ。建築では作業員が確保できないために受注できる案件を受注しないケースもみられているほどだ。このため、現時点ではさほど基地に経済が依存している印象はなく、直接基地で雇用されている人を除けば、基地を経済のためにおいていると考えている市民は少ないだろう。

――日本政府に求めることは…。


仲新城 八重山は、海を中国に荒らされる一方で、北朝鮮の弾道ミサイルがすぐ上の空を通過するなど、海と空の両面で日本の国防の最前線といえる。日本政府にはそのことを理解したうえで、繰り返される領海侵犯などに対応してほしい。そのためには、ただ警告するだけでなく、いざという時には実力も行使するという覚悟を示す必要があるだろう。ただ、例えば尖閣諸島に自衛隊を駐留させたりすれば中国を強く刺激し、戦争一歩手前にまでエスカレートしてしまう恐れがある。硬軟あわせたアプローチが必要だ。

――中国との対話は必要か…。


仲新城 中国は完全に尖閣諸島を奪う考えであり、話し合いができる状態ではない。例えば共同開発などで合意したところで、中国は数を頼りに権益を拡大してくるだろう。例えば日本と台湾との間で締結された漁業取り決めでも、互いに範囲を決めて漁業を行うことが合意されたが、実際は対象海域を台湾漁船が埋め尽くし、八重山の漁民は海域に入ることもできずに漁業を自粛せざるをえなくなっている。そもそも現状で尖閣諸島は日本が押さえているのだから、それをわざわざ放棄し、共同開発に合意するというのは主権を手放すのも同然だ。政府にはこうした現状を踏まえ、毅然とした態度で中国に対応してもらいたい。