新党はしがらみ政治を脱却

新党はしがらみ政治を脱却

衆議院議員
若狭 勝 氏


聞き手 編集局長 島田一

――日本ファーストの会は新たな政党となるか…。


若狭 7月に「日本ファーストの会」を設立したが、これはあくまで政治団体であり、新たな政党の名称ではない。新党を結成した際には別の名前を付ける予定だ。新党では民進党を離党した国会議員との連携などが報じられているが、民進党にも様々な考え方の議員がいる。民主党を離党し、しかも基本的な政策に関する考え方が合致していれば一緒に行動することはあり得るし、そうした人は一定程度いるはずだ。すでに細野豪志衆院議員や長島昭久衆院議員らと会談を行っており、考え方が一致しているかどうかの政策協議を進めている。

――考え方の合致が必要となる基本的な政策とは…。


若狭 例えば憲法や安全保障、外交、経済、財政、金融、エネルギー、多様性などが挙げられる。特に憲法については、「何がなんでも改正反対」という立場の人は受け入れられない。政治体制を裁判システムに例えれば、法廷の中央に裁判官たる有権者が座っており、検察官席には自民党が、それに対峙する弁護人席にはしっかりとした政党が座り、二大政党制が確立しているという形が最も理想的だ。経済において競争が重要であることと同様に、政治にとっても競争が必要だ。政策課題について二大政党がしっかり競争し、有権者に対して誠実に説明を行うことにより、はじめて裁判官である有権者が適切な判断を下すことが可能になる。私は自民党に対峙して弁護人席に座る新たな党を作っていきたいが、与党の政策に全て反対意見を主張することが政治だとは思っていない。こうしたことを考えたとき、絶対に憲法改正には反対という人は私が作ろうとしている新党メンバーとして弁護人席には座る資格はないと考えている。

――新党の安全保障に対する基本的な考え方は…。


若狭 2年前に集団的自衛権の行使を限定的に容認する平和安全法制が制定された。ただ、当時自由民主党の所属議員だった私は法案の採決を棄権し、賛成票を投じなかった。平和安全法制では集団的自衛権を行使する際の新3要件が設けられたが、そのうちの1つが「存立危機事態」という条件で、つまり「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」ような事態が予想される場合と定義づけられている。しかし、平和安全法制を制定した2年前の国会の議論では、何をもって存立危機事態とするかが極めてあいまいなまま放置されていた。本来はそれこそが最も重要なポイントなのだが、そこを突き詰めずに採決に至ったことは法律家としても強い問題意識を持っている。日本を取り巻く安全保障環境としては、北朝鮮が今まさにグアムに向けてミサイルを発射しようという事態となっており、日本は存立危機事態としてこのミサイルを打ち落とせるかという議論が浮上している。ただ、仮にグアムに向けてミサイルが発射されたとして、それにより日本国民の生命の安全が根底から覆されるかと問われると、関連性は低いと判断せざるを得ないだろう。存立危機事態が果たしてどのような事態なのかをしっかり詰めていければ、時の政府が恣意的に存立危機事態を拡大解釈し、安易に集団的自衛権が発動される危険性がある。新党を立ち上げた場合、私は何が存立危機事態に当たるのかを改めて煮詰めなければいけないということを主張するつもりだ。

――外交政策に関する新党の方針は…。


若狭 少なくとも、日米同盟についてはこのまま存続させる方向となるだろう。ただ、米国という国家との関係というよりも、現在のトランプ米大統領の特殊性を勘案し、無条件で同盟を強化していくというわけにはいかない。もちろん中国も大国であり、私個人としても関係をうまく構築していく必要があると考えている。日中関係のトゲとなっている尖閣諸島の問題は、「実効支配」がポイントだ。民法において他人の土地を20年間占有し続けると所有権を取得できる時効取得という制度があるように、事実上の支配や実効支配という事態は法律上とても重要だ。尖閣諸島に対しては中国が徐々に迫ってきており、今後に既成事実を積み上げてくるようであれば、日本としてもしっかり対応しなければならない。少なくとも尖閣諸島については日本が実効支配をしていることをもっと明らかにしていくべきだ。

――経済・財政政策に対するお考えは…。


若狭 安倍首相が推し進めるアベノミクスでは、日銀の大規模緩和政策に対する是非はあるにせよ、一番の問題はしっかりとした成長戦略を打ち立てられていないことだ。2019年10月に予定されている消費税率10%への再引き上げに向けては誰もが納得できるような成長戦略を示すことが必要だが、このままでは再増税はかなり難しい。成長戦略こそが経済戦略の肝であり、我々も知恵を絞りながら真に有効な施策を考えていきたい。また、国内でもリフレ派と反リフレ派で論争をしているが、日本の財政事情からすればプライマリー・バランスなど財政規律もある程度考慮しなければいけない。リフレ派、反リフレ派の双方とも経済の持続的な発展の重要性は認識しているはずであり、どちらの立場を取るにせよしっかりとした成長戦略を打ち出すことが必要だ。

――成長戦略でもっとも重要となる施策は…。


若狭 日本の今後100年間を見つめる際、少子高齢化対策は本当に優先度が高いと考えている。政府として専ら少子高齢化対策に集中するくらいのつもりでの取り組みが必要であり、例えば憲法の中に「国は少子高齢社会の課題については最優先で取り組まなければいけない」といった条文を書き込んでもよいぐらいだ。こうした条文は一般的にプログラム規定と称されているが、憲法に盛り込むことによって少子高齢化対策を絶えず意識しながら様々な政策を打ち出していくことが可能になると考えている。

――日本の政府は非効率であり、小さな政府に向けて進んでいくべきではないか…。


若狭 国から地方、官から民に権限や財源を移譲していくという方向性は正しいと思う。私は東京地検特捜部の検事や副部長として自民党政治を一番奥深いところから観察し、政治家の責任を追及してきた。その経験からつくづく感じるのは、自民党はしがらみ政治であり、その弊害があらゆるところで顕在化してしまっているということだ。旧来のしがらみを取り払っていけば本当に重要な政策に的を絞って進めていくことができるはずであり、しがらみ政治からの脱却は新党の軸の一つとなるだろう。

――東京都議会議員選挙では、小池都知事の透明性に対する支持が集まった…。


若狭 政策課題をしっかり打ち出すことに加え、それを実現するための政治手法も極めて重要だ。透明性や情報公開はまさに政治手法であり、古い自民党政治の手法を取り払って新たなものにしていかなければならない。さらに政治手法で言えば、もともと国会議員には党議拘束があり、各法案の賛否については党の上層部の決定に従わなければならない。現在の国会議員はただの採決マシンとなっており、賛否について自分の頭で考えなくなっているために議員としての質も下がっている。党の根幹に関わるような政策に党議拘束をかけることはやむを得ないとしても、やはり基本的には党議拘束を外し、議論に議論を重ねていくべきだ。そうするとそれぞれの国会議員は自分で主張を整理する必要が生じてくるため、各法案の内容について勉強するようになってくるだろう。基本的な政策に対する考え方が一致する人たちが集い、真剣に議論を重ねれば結論は収れんしていくはずだ。

――このほか現在の政治手法で改めるべき点は…。


若狭 もう1つ、当選回数至上主義が大変な悪弊となっている。衆院で7、8回当選すると「大臣待機組」などと呼ばれるようになり、適材適所ではなくこうした待機組を順番に選んでいくから失言をするような大臣が出てきてしまう。当選回数至上主義でさらに問題なのは、選挙に当選し続けることが求められているためだ。今の小選挙区の下では各党の公認候補は1人しか出馬しないため、その公認を得るためには首相官邸や党にすり寄っておく必要がある。その結果、今回の森友学園や加計学園の問題でも安倍首相に苦言を呈することができないように、自民党内で昔と比較して自由な発言が出来なくなってきている。こうした政治の進め方は大いに改めなければならない。