環境政策を経済成長のけん引役に

環境政策を経済成長のけん引役に

環境大臣
中川 雅治 氏


聞き手 編集局長 島田一

――8月の内閣改造で環境大臣に就任した…。


中川 環境行政で対応すべき課題は様々なものがあるが、環境政策を経済成長の新たなけん引役にしていきたいと考えている。 日本の環境技術やノウハウを海外に輸出することも促進し、環境問題への取り組みによって同時に社会経済上の課題を解決していきたい。また、国民が環境に良いものを優先的に購入するという環境マインドを高めるよう取り組みたい。これらの施策により、将来にわたり質の高い生活をもたらす、持続可能な社会を実現できるようにしたいと考えている。この点、20年にはオリンピック・パラリンピックが東京で開催されるが、諸外国に対し環境先進国としての取り組みを示していきたい。そして、これを契機に、11年に起きた東日本大震災からの復興を印象づけられるようにしたい。

――環境事務次官に就任していた15年前と比べ、環境省の取り組みも変化している…。


中川 東日本大震災の発生により、環境省の重要な仕事として福島復興に向けた取り組みが加わった。除染や中間貯蔵施設の整備、汚染廃棄物の処理、福島県民の健康管理という重要な任務がある。これに伴い、予算や人員も格段に増加した。原子力規制委員会は独立性が高いものの、環境省の外局であるため、委員会の予算や人員のサポートも仕事となる。任務が増えたことで、責任もますます大きなものとなった。予算規模では、復興特会の予算を含めると1兆円程度になる。環境省が当初から所管する分野だけでも3000億円程度となるが、これだけでも15年前に比べて格段に増加している。これに加え、福島復興関連の予算が7000億円近くとなる。職員数も、当初の500人程度から比べ、環境省全体で3000人程度と増加した。

――東日本大震災からの復興への取り組みは…。


中川 除染特別区域の除染は今年3月末に終了したが、必要なフォローアップ除染や、帰還困難区域に拠点を設けて行う除染は今後も実施する。除染で発生した土壌は、中間貯蔵施設に運び込んで保管する。現在はその土壌をフレコンバッグに詰めて仮置場に積んでいる状態なので、これを早急になくす必要がある。中間貯蔵施設は、東京電力福島第一原子力発電所を取り囲む形で、福島県大熊町と双葉町に整備することに決定している。中間貯蔵施設の工事も、本格稼働に向けて進んでいる。中間貯蔵施設に運び込んだ土壌は、30年後に県外で最終処分することも決まっている。

――最終処分に向けた作業は進んでいるのか…。


中川 最終処分する廃棄物の分量を極力少なくするよう、容積を減少させる技術を開発している。可能なものは極力再利用する方針だ。汚染物質の容積を減少させる技術が確立すれば、これは有用なノウハウとして蓄積できる。環境省の予算の中には、この技術開発に充てるものも含まれている。

――直近ではヒアリ対策も課題にあがっている…。


中川 ヒアリは中国の特定の港から運び込まれるコンテナに付着して持ち込まれることが多いため、まずは水際で予防する必要がある。ヒアリのいる地域から運び込まれるコンテナが到着する港は、日本に合計68カ所あるが、環境省でもヒアリが持ち込まれていないか調査を実施している。8月に開催された日中韓環境大臣会合でも、ヒアリ問題が議題となった。日中韓の事務方で具体的な対応を議論するよう合意したほか、中国の環境大臣に対しては、適切な対応を取るよう依頼した。ヒアリに限らず、危険な外来生物は貿易を通じて荷物とともに持ち込まれることが多い。このため、ヒアリが持ち込まれる水際で食い止め、定着を防ぐよう、今まさに取り組んでいるところだ。港湾管理者や事業者、運搬業者などとの連携も行う。コンテナを積み上げた際にできる港湾のアスファルトのひび割れに、ヒアリが住み着かないよう、充填材を流し込む対策もしている。

――温室効果ガス削減に向けた対策は…。


中川 30年度に温室効果ガスを13年度比で26%削減するよう目標を掲げているが、これは将来世代への約束として国を挙げて必ず実現しなければならないことだ。16年5月に決定した地球温暖化対策計画に基づいて、削減目標の着実な達成を図っていく。家庭やオフィスビルでのLED照明や、省エネ家電、エコカーなどの省エネ機器の導入、または太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーの最大限の導入など、国民生活や産業活動のあらゆる分野で対策を進めていく。このように、環境省として温室効果ガス削減の取り組みを広げるよう、財政支援や技術開発などの政策を総動員していく。なお、原発については、いかなる事情よりも安全性を優先し、原子力規制委員会が、科学的・技術的に審査し、世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認めた原発について、その判断を尊重するというのが一貫した政府の方針である。ただ、原発依存度については、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入などにより、可能な限り低減させるということが政府の方針である。環境省としても、政府の方針に従い再生可能エネルギーの最大限の導入を進める方針だ。

――環境に配慮した「環境金融」への動きが広がっている…。


中川 経済の血流となる金融に環境配慮を組み込んでいくことは、環境問題の解決に向けて極めて重要だ。環境に関する情報を考慮した投資行動をさらに促進していきたい。具体策の1つとして、環境省では環境情報開示システムの実証を進めている。各企業が積極的に開示を進めている環境関連の情報を統一的に見ることができ、投資家にとっては効率的な比較分析が可能となるシステムを目指している。企業に対しこのシステムへの参加を呼びかけており、現在参加企業は255社程度まで増加した。今後もより多くの企業の参加を促す。このほか、市場関係者の実務担当者に向けたグリーンボンドガイドラインを策定した。グリーンボンドは既に国内でも発行実績があり、急速に市場が拡大している。環境省ではグリーンボンドに期待される事項や具体的な対応例を示し、普及を後押ししていく方針だ。